2012年05月07日

幾つになっても!~風にそよぐ草

フランス映画の巨匠、アラン・レネの新作です。
この映画を撮った時、彼は87歳。
前宣伝では、メルヘンチックな大人の恋愛映画ということになっていますが、そこは彼のこと、とてもじゃないけど一筋縄ではいきません。
正直云って、シュールというか、ほとんどワケわかりません。
あまり映画を見慣れていない人や、常識的発想から抜け出せないタイプの人にはお薦めしません。
きっと頭の中がクチャクチャになってしまいます。
ただ、そのあたりをキチンと飲み込んで楽しめる映画好きなら、見るべきところは多いと思います。
何といっても90歳目前の老人が撮ったとはとても信じられない、そのみずみずしい映像が魅力。
さすが、アラン・レネ、只者じゃないです。

幾つになっても!~風にそよぐ草


クリスチャン・ガイイの小説が原作で、一応ストーリーらしきものはあります。

もう若くはない独身の女性歯科医が失くしたバッグを、孫もいる初老の男が拾って警察に届けます。
バッグの中には女性の身元を示すものとして、小型飛行機の操縦免許証がありました。
関心をもった男は、謝礼の電話をかけてきた女をいきなり誘います。女は断ります。
さらに男が追うと、女は逃げます。
しかし、男があきらめようとすると、逃げたつもりの女が今度は逆に男を追いかけるのです。

幾つになっても!~風にそよぐ草


熟年とはいえ、いつまでも燃え尽きない男と女の恋愛心理のヒダを軽やかなタッチで描いていきます。
アスファルトや石壁の裂け目から芽を出す草の映像が何度も出てくるのですが、理屈通りには進むはずのない人の心の不条理を象徴しているかのようです。
いい歳をして、と大概は退けられるのでしょうが、恋愛は歳とは関係ないよと謳いあげる人間賛歌でもあるのでしょう。

本編とはどう見ても関係なさそうな唐突なラストがまた人を喰っています。
「猫になったら、私も猫の餌が食べられるの?」と問いかける少女。

良識的なフリをして気取っているけど、あんたたちだって彼らの身になってみれば、きっと同じように振る舞うだろうさ…
そう云ってほくそ笑んでいる、アラン・レネのしたり顔が目に浮かぶようです。


タグ :情景アート

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