2012年07月01日
11・25自決の日!~三島由紀夫と若者たち
若松孝二監督の昭和史連作につらなる一作です。
独特のドキュメンタリーな手法で、1970年11月25日の自衛隊市ヶ谷駐屯地における三島由紀夫割腹事件を描いています。
アンクルはいつも、その映画の感想をキャッチコピーとして題名にかぶせているのですが、今回は原題のままです。
よく出来たキャッチコピーが題名そのものだからです。
当時、ノーベル賞候補で45歳の有名作家だった三島由紀夫が、自ら率いる私的民兵組織「楯の会」の会員だった早大生森田必勝をはじめとする4名の隊員とともに、自衛隊市ヶ谷駐屯地で総監を監禁し、自衛隊員に憲法改正を訴え決起を促すも叶わず、総監室において森田と共に割腹して果てました。
若松監督は、この事件を美化するでなくまた糾弾するでもなく、淡々と事実のみを描写していきます。
この作品は、監督が連合赤軍事件を取り上げた2008年の「実録・連合赤軍あさま山荘への道程」と対になっていると思いました。
ふたつの作品を見ると、当時の時代が見えて来るし、そこに監督の意図したところが明らかになるように思いました。
アンクルは同時代の真っ只中にあった人間のひとりとして、あらためてその時の気分をもう一度考えさせられました。
そこで感じたのは、それぞれ右と左で立場をまったく逆にするのに、驚くほど共通した土壌の上に立っていたということです。
三島と若者たちは美しい日本の伝統を守りたいと願い、堕落したこの国を変えようと訴えた。
しかし、彼らが求めたのはサムライとしての精神性であって、政治レベルでの変革と呼べるものではなかった。
武器として、銃火器を否定しあくまで日本刀にこだわるところに、その特質が表われていると思います。
一方、連合赤軍も『自らの内なる革命』にこだわり、自己批判、総括、そしてリンチ処刑へとエスカレートして行きました。
重箱の隅をほじくるような些細な事にまで自己変革を迫るあまり、本来求めるべきはずだった社会変革から遠のいてしまったのです。
両方とも、哲学、文学的な思考に偏り、現実の社会との関係性にあまりにも乏しく、非現実的な机上の空論を、あたかも現実であるかのように勘違いしていたのではないか?と思いました。
その意味で、連合赤軍も三島由紀夫も、はじめから勝ち目のない戦いに挑んだドン・キホーテたちだった、という気がしました。
その行為が美しいかどうかは賛否あるところでしょうけど…
それにアンクルは、ここに見る筋肉隆々の肉体美をひけらかし、やれ男の生きざまだ、男の美学だ、男の世界だ、と陶酔するこの手の美意識が大嫌いです。
イデオロギー以前の問題として、生理的に受け付けません。
花の盛りにいさぎよく散りたいなどという死生観が、この国の美しい文化だという主張も、正直云って理解できません。
そんなものは、単なる青臭いナルシシズムにしか過ぎない…!
生き永らえ、老いさらばえ、どこかその辺の片隅で、誰にも知られず、ひとり消えてゆく…
アンクルは、“死”とはそのように客観的なものだ、と考えるからです。
独特のドキュメンタリーな手法で、1970年11月25日の自衛隊市ヶ谷駐屯地における三島由紀夫割腹事件を描いています。
アンクルはいつも、その映画の感想をキャッチコピーとして題名にかぶせているのですが、今回は原題のままです。
よく出来たキャッチコピーが題名そのものだからです。
当時、ノーベル賞候補で45歳の有名作家だった三島由紀夫が、自ら率いる私的民兵組織「楯の会」の会員だった早大生森田必勝をはじめとする4名の隊員とともに、自衛隊市ヶ谷駐屯地で総監を監禁し、自衛隊員に憲法改正を訴え決起を促すも叶わず、総監室において森田と共に割腹して果てました。
若松監督は、この事件を美化するでなくまた糾弾するでもなく、淡々と事実のみを描写していきます。
この作品は、監督が連合赤軍事件を取り上げた2008年の「実録・連合赤軍あさま山荘への道程」と対になっていると思いました。
ふたつの作品を見ると、当時の時代が見えて来るし、そこに監督の意図したところが明らかになるように思いました。
アンクルは同時代の真っ只中にあった人間のひとりとして、あらためてその時の気分をもう一度考えさせられました。
そこで感じたのは、それぞれ右と左で立場をまったく逆にするのに、驚くほど共通した土壌の上に立っていたということです。
三島と若者たちは美しい日本の伝統を守りたいと願い、堕落したこの国を変えようと訴えた。
しかし、彼らが求めたのはサムライとしての精神性であって、政治レベルでの変革と呼べるものではなかった。
武器として、銃火器を否定しあくまで日本刀にこだわるところに、その特質が表われていると思います。
一方、連合赤軍も『自らの内なる革命』にこだわり、自己批判、総括、そしてリンチ処刑へとエスカレートして行きました。
重箱の隅をほじくるような些細な事にまで自己変革を迫るあまり、本来求めるべきはずだった社会変革から遠のいてしまったのです。
両方とも、哲学、文学的な思考に偏り、現実の社会との関係性にあまりにも乏しく、非現実的な机上の空論を、あたかも現実であるかのように勘違いしていたのではないか?と思いました。
その意味で、連合赤軍も三島由紀夫も、はじめから勝ち目のない戦いに挑んだドン・キホーテたちだった、という気がしました。
その行為が美しいかどうかは賛否あるところでしょうけど…
それにアンクルは、ここに見る筋肉隆々の肉体美をひけらかし、やれ男の生きざまだ、男の美学だ、男の世界だ、と陶酔するこの手の美意識が大嫌いです。
イデオロギー以前の問題として、生理的に受け付けません。
花の盛りにいさぎよく散りたいなどという死生観が、この国の美しい文化だという主張も、正直云って理解できません。
そんなものは、単なる青臭いナルシシズムにしか過ぎない…!
生き永らえ、老いさらばえ、どこかその辺の片隅で、誰にも知られず、ひとり消えてゆく…
アンクルは、“死”とはそのように客観的なものだ、と考えるからです。
Posted by アンクル at 17:42│Comments(4)
│シネマホール
この記事へのコメント
あの事件のとき、私は中学生でした。
子どもだった私でさえ、はっきり記憶に残っている衝撃的な事件で、新聞や雑誌などを熱心に読みました。
あの頃は読んでも、全体の意味がまったく理解できませんでしたが、しかし、どことなくアヤシゲな雰囲気があるような感じもして、親や友達とは、意識的に事件のことを話さなかったことを憶えています。
今回、アンクルさんのお話を聞いて、「う~ん…なるほどネ。」と。
あの時抱いたアヤシゲなところがどこだったのか、教えていただけたような気がします。
連合赤軍事件と対比させるとは、
さすがっ!アンクルさん。
なるほど…。
ありがとうございます。
子どもだった私でさえ、はっきり記憶に残っている衝撃的な事件で、新聞や雑誌などを熱心に読みました。
あの頃は読んでも、全体の意味がまったく理解できませんでしたが、しかし、どことなくアヤシゲな雰囲気があるような感じもして、親や友達とは、意識的に事件のことを話さなかったことを憶えています。
今回、アンクルさんのお話を聞いて、「う~ん…なるほどネ。」と。
あの時抱いたアヤシゲなところがどこだったのか、教えていただけたような気がします。
連合赤軍事件と対比させるとは、
さすがっ!アンクルさん。
なるほど…。
ありがとうございます。
Posted by 蓮子 at 2012年07月02日 15:48
蓮子さま
こんな人気のなさそうなシリアスな記事にコメントありがとうございます
それに引き換えアンクルは、相変わらずのドジ話にヘラヘラと反応するだけで…
スビバセン、ドーモ
若松孝二がホントに言いたかったのは、ドン・キホーテにしか過ぎないかも知れないけど、かつて人々は真剣にラジカルに考えたのだ、ということでしょう?
なのに今の我々は、あれほどの惨事と犠牲を経験したのに、それを克服さえ出来ない
グローバリズムも経済至上主義も3・11で終わったのに、まだそれにしがみつくことしか出来ない
今、問われているのは、貧しい暮らしに戻る覚悟を持てるか否かなのに、計画停電にさえ文句を言う
すべてに、安直に過ぎると思います
こんな体たらくでは、この国はもうダメです
アンクルは、嘉田知事や近江八幡市長に、真剣に再生可能エネルギーによる発電所を検討してもらいたいと考えています
地域によるエネルギー供給の自立…
それこそが、これからの時代の始めなければならない第一歩だと思うからです
こんな人気のなさそうなシリアスな記事にコメントありがとうございます
それに引き換えアンクルは、相変わらずのドジ話にヘラヘラと反応するだけで…
スビバセン、ドーモ
若松孝二がホントに言いたかったのは、ドン・キホーテにしか過ぎないかも知れないけど、かつて人々は真剣にラジカルに考えたのだ、ということでしょう?
なのに今の我々は、あれほどの惨事と犠牲を経験したのに、それを克服さえ出来ない
グローバリズムも経済至上主義も3・11で終わったのに、まだそれにしがみつくことしか出来ない
今、問われているのは、貧しい暮らしに戻る覚悟を持てるか否かなのに、計画停電にさえ文句を言う
すべてに、安直に過ぎると思います
こんな体たらくでは、この国はもうダメです
アンクルは、嘉田知事や近江八幡市長に、真剣に再生可能エネルギーによる発電所を検討してもらいたいと考えています
地域によるエネルギー供給の自立…
それこそが、これからの時代の始めなければならない第一歩だと思うからです
Posted by アンクル at 2012年07月02日 22:32
日本刀を振って散華するのも、
ゲバ棒を握って革命するのも、
もはやバカバカしいとしか言えない
時代となり、権力の見えざる手の中で
世界が傾いていくのを斜めに眺めて
いる気分のこの頃です。
とはいえ、年金は払ってくれないと
困るしなあ。
人間いつまでも生きられるわけでなし
おだやかに老いていって
「願わくば花のもとにて春死なむ・・・・」
と終わりたいものです。
難しいかなあ。
ゲバ棒を握って革命するのも、
もはやバカバカしいとしか言えない
時代となり、権力の見えざる手の中で
世界が傾いていくのを斜めに眺めて
いる気分のこの頃です。
とはいえ、年金は払ってくれないと
困るしなあ。
人間いつまでも生きられるわけでなし
おだやかに老いていって
「願わくば花のもとにて春死なむ・・・・」
と終わりたいものです。
難しいかなあ。
Posted by 埼玉の酔仙 at 2012年07月05日 21:09
酔仙さま いつもありがとうございます
この時代とは対照的に、昨今の現実との関係性の浮薄な馴れ合いの傾向には、呆れるというより怒りを覚えますね
年金をゴチャゴチャいじるようなら、アンクルはもういっぺんゲバ棒にぎったろか、と思ってますけど…
世代間闘争に持ち込んだら、絶対負けへんで…と
まぁでも、そんな過激な年寄りの冷や水は可愛くないですからね
ここはおとなしく老いていくのが世のため人の為でしょう
ただ、失礼ながら酔仙さんに『西行』は似合わないでしょう?
あれやこれやと忙しく立ち働いて、そんな予定調和は吹き飛ばして下さい
この時代とは対照的に、昨今の現実との関係性の浮薄な馴れ合いの傾向には、呆れるというより怒りを覚えますね
年金をゴチャゴチャいじるようなら、アンクルはもういっぺんゲバ棒にぎったろか、と思ってますけど…
世代間闘争に持ち込んだら、絶対負けへんで…と
まぁでも、そんな過激な年寄りの冷や水は可愛くないですからね
ここはおとなしく老いていくのが世のため人の為でしょう
ただ、失礼ながら酔仙さんに『西行』は似合わないでしょう?
あれやこれやと忙しく立ち働いて、そんな予定調和は吹き飛ばして下さい
Posted by アンクル at 2012年07月05日 22:13